作詞 高野辰之
作曲 岡野貞一

1.菜の花畠に 入り日薄れ
  見わたす山の端 霞ふかし
  春風そよふく 空を見れば
  夕月かかりて にほひ淡し

2.里わの火影も 森の色も
  田中の小路を たどる人も
  蛙のなくねも かねの音も
  さながら霞める 朧月夜

美しい文語体の歌詞で書かれているこの曲は、作詞を高野辰之、作曲を岡野貞一によって、大正3年に尋常小学唱歌として発表されました。歌詞」はこのような内容ではないでしょうか。

 

   <1番> 菜の花がいっぱい咲いている畑に夕日が沈んできています。ずーっと遠くを見渡してみると、

        山ぎわに霞がかかっています。長く厳しかった冬が過ぎて、柔らかな布団に包まれているよう

        な春の優しい風が吹いてきています。ふっと空を見上げたら、夕月が出てきていて、ほんのり

        と明るくなっています。

 

   <2番> 里のお百姓さんの家の夕餉の煙と相まって、村全体がぼーっと霞がかっています。

        森も薄暗くなり、お百姓さんは1日の農作業を終えて、田んぼのあぜ道を帰っています。

        遠くではお寺の鐘がゴーンと鳴り響き、蛙が鳴き始めました。朧月が静かに優しく、村の

        人々の生活すべてを包み込んでいるような気がします。

 

 

山里の春の風景を唱っていますが、日本人の感性に溶け込むような言葉、また淡い色彩の描写も私たちの心にしみじみと入ってきます。おぼろに風景が霞む様は、日本の春の特徴でしょうか。

現代人はあまりにも時間に追われ、慌ただしい生活を送っています。物事を立ち止まって見たり、考えたり、感じたりすることのない生活に慣れきってしまっているかもしれません。

「朧月夜」の歌詞に見られるような原風景は、今も日本人の生活を支える環境や風土とも言えるでしょう。これは歴史を越えて、人々に残っていくものです。この素晴らしい日本を取り戻し、大切にしたいと思っています。