冬の星座

作詞 堀内敬三
作曲 ヘイス 

1.

木枯らしとだえて さゆる空より

地上に降りしく 奇(くす)しき光よ

ものみないこえる しじまの中に

きらめき揺れつつ 星座はめぐる

2.

ほのぼの明かりて 流るる銀河

オリオン舞い立ち スバルはさざめく

無窮をゆびさす 北斗の針と

きらめき揺れつつ 星座はめぐる

つい先日、はやぶさ2のカプセルが無事地球に帰還したという報道がなされていました。漆黒の空にひときわ明るい火球が美しいまっすぐな尾を引いて、画面の右から左へと直進する映像、それを見て日本各地のいたるところで、涙を流して喜ぶ人々のニュースが伝えられていました。人は宇宙―その神秘の世界、未知の世界―に憧れや夢を持っています。ふと見上げた夜空に、何とも言えない感動を覚えた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

この歌は、昭和22年(1947年)7月発行の「中学唱歌Ⅰ」に発表されました。歌詞は堀内敬三氏によるものです。彼は浅田飴本舗の三男として東京に生まれました。若い日には6年半、アメリカに留学しました。専門の自動車工学や力学の分野だけでなく、音楽においても毎週のようにオーケストラなどの生の音楽にふれ、また音楽の専門知識も学びました。その時の事を、「一生で最良の時であった。」と、語っています。科学や音楽のみならず、文学(一時期、小説家を志しておられた)にも造詣が深く、そういったところがこの詞にもあらわれているように思われます。帰国後は、日本の音楽界に大きな影響を与え、貢献されました。この「冬の星座」の歌詞は、普段あまり使わない言葉を用いていますが、そのひとつひとつの言葉に、日本語の美しさ、奥深さを感じるものです。歌詞の内容は次のようです。

 

1.冷たい北風がやんで、しんしんと冷え込んだ澄みきった夜空から

不思議な光が地上に降り注いでいる

すべてのものが、この静寂のなかで休息している

きらめきながら、星はめぐっていく

 

2.ほんのり明るくなって 銀河が流れているようだ

オリオン座は空から舞いあがっていくよう スバルはきらきらと光り輝いている

北斗七星は無限に広がる宇宙をさしている

きらめきながら、星はめぐっていく

 

作曲はアメリカのポピュラーソング作家でもあるヘイスですが、詞と曲が調和して互いに生かし合って、格調ある素晴らしい作品だと思います。歌詞は私たちの心に深くしみこんできて、悠久への思いをいだかせてくれます。