小さい秋みつけた

サトーハチロー 作詞
中田喜直 作曲

1.

誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
めかくし鬼さん 手のなる方へ 
澄ましたお耳に かすかにしみた 
呼んでる口笛 もずの声
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた

2.

誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
お部屋は北向き くもりのガラス 
うつろな目の色 とかしたミルク 
わずかなすきから 秋の風
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた

3.

誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
むかしのむかしの 風見の鳥の 
ぼやけたとさかに はぜの葉ひとつ 
はぜの葉あかくて 入日色
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた

少しさみしげな前奏で始まるこの歌を聴くと、まるで別世界にでも入ったような心地がします。昭和30年(1955年)11月3日、NHK放送記念祭「秋の祭典」で、13歳の少女伴久美子が女性合唱付きで初めて歌いました。後に、昭和37年(1962年)ボニージャックスの歌で一躍注目を集めました。作詞をしたハチロー氏は歌の依頼を受けて、<原稿用紙を前に布団に腹ばいになって外を見ていたら、赤くなったはぜの葉を見て、言い知れぬ秋を感じてこの歌を書き上げた。>と言っています。彼は幼い時、誤って鍋の熱湯を浴びて負った大やけどの為、母ハルの背中に負われて小学校に通いました。遊びたいさかりに家でぼんやり庭を眺めて過ごす彼を不憫に思い、ハルは自分の通う教会に彼を連れて行ったそうです。

 


「♪ 鬼さん 鬼さん 手のなる方へ〜」外ではみんな鬼ごっこをしている、早く一緒に遊びたいな〜 あっ 遠くで口笛が聞こえる もずがギチギチと鳴いているよ あぁ 秋だなぁ

 

北向きのお部屋 外の見えないくもりガラス そのくもりガラスに自分の顔が 写っている わたしのうつろな目は、ミルクをとかしこみ白い膜がかかっているようにも見える 寝ている部屋に吹き込んでくるすきま風が ひんやりとしている お外は秋なんだなぁ

 

庭のはぜの葉は 昔お母さんに連れて行ってもらった教会の風見鶏のトサカに似ているよ 古くなったトサカのところに 真っ赤なはぜの葉がひっかかっていてまるで本物みたいだ ぼくは秋を見つけたよ

 

「ちいさい秋」ってなんでしょう?散歩をしていてかすかに聞こえた虫の声夏とは違う風の涼しさを覚えた時日暮れの時間が早くなり、少し寂しさを感じた時イチョウの木に黄色の実がつきはじめた時やおやさんに栗が出始めた時金木犀の香りがどこからともなくふーっと漂う時・・・・

わたしたちがそれぞれ感じた秋は、人生に豊かな彩りを残していくことでしょう。