作詞・作曲 窪田 聡

1.

母さんは夜なべをして
手袋編んでくれた
“木枯らし吹いちゃ 
冷たかろうて
せっせと編んだだよ“
ふるさとの便りは届く
いろりの匂いがした

2.

かあさんは麻糸つむぐ
1日つむぐ
“おとうは土間で 
わら打ち仕事
お前もがんばれよ“
ふるさとの冬はさみしい
せめてラジオ聞かせたい

3.

かあさんのあかぎれ痛い
生味噌をすりこむ
“根雪もとけりゃ 
もうすぐ春だで
畑が待ってるよ“
小川のせせらぎが聞こえる
懐かしさがしみとおる

「歌声喫茶」という言葉を、その昔よく聞いていました。

喫茶店の中では伴奏者や指導者が立ち、お客さんは歌詞カードを持って、ロシア民謡や日本の新しい歌を歌っていました。とてもブームになったようで、今回紹介する「かあさんの歌」もその中の一つです。(1956年に「うたごえ新聞」に発表)この歌を作詞作曲された窪田氏は、現在岡山県牛窓で2か月に1回くらいのペースで「歌のある風景」というコンサートをなさっているそうです。「かあさんの歌」は窪田氏が小学校の時、長野県つわ村に疎開した1年間の経験が基となって作られたものです。

おじさんの家に居留していた窪田氏は、おばあさんが麻糸を紡いで、おじさんが土間で藁打ちをして、草履を作っていた(冬は畑仕事ができなかったため)、そんな記憶があるとおっしゃっています。東京生まれの東京育ちだそうですが、ひと昔前の雪国の生活が手に取るように伝わってきます。文学で生きようと志を立てた窪田氏は、家出をして職を転々としているうちに、お兄さんが窪田氏の下宿を探し当て、その後お母さんからの郵便物が届くようになりました。その中に好物の食べ物や手編みのセーター、「体をこわさないように。」という手紙が入っていたそうです。この歌は、お母さんに反抗してきた息子の(直接には言葉で伝えることのできなかった)、お父さん、お母さんへの感謝の思いといたわりが込められているような気がします。

物質的には乏しい時代であったかと思いますが、情感あふれる言葉にあたたかさを感じます。郷里への懐かしさとともに、親のひたむきな愛と、当時の素朴な生活感がしみじみと感じられる名曲ではないでしょうか。

ずーっと歌い継がれていってほしいものです。