明治38年、日露戦争に勝利した日本は、翌年、南満州に鉄道会社(満鉄)を設立しました。
現地には南満州教育会があり、日本の子供たちが満州に親しみを覚えることのできる教材
を用いて、教育を行おうとしました。そうした中で、満州の風土を反映させた歌、満州色
豊かな歌が制作されていきました。1924年に発表された北原白秋作詞、山田耕筰作曲の「
ペチカ」もそのひとつです。ペチカとは、シベリアや北欧などで使用されるレンガ造りの
暖房装置のひとつです。満州の寒さは日本とは比べ物になりませんから、大型の暖房装置は
欠かせないそうです。レンガが温まり、その輻射熱で部屋全体が暖かくなるそうです。
「ペチカ」の1番から5番までの歌詞は、まるで童話でも読んでいるかのようです。ペチカのある暖かい部屋へと引き込まれていきます。外では雪がしんしんと降り積もっていきます。厳しい冬の寒さの中で、家族が集まって憩えるのはペチカのある部屋。外では、「焼き
栗はいかがー。」と栗を売る声が聞こえます。赤々と燃えるペチカの傍らでは、話がはずんでいきます。お父さんお母さんの子供のころの楽しい思い出や、子ども達の明るい笑い声が
聞こえてきそうです。そして、お客さまがいらっしゃるのを楽しみに待っています。
薪や石炭を燃やして暖をとる。かすかにパチパチと燃える音がする。
薪や石炭を燃やすことは、今ではあまり見かけなくなりました。しかし、最近ではあえて薪
ストーブや暖炉を取り入れた生活が注目されています。そこでおこされる炎をじーっと見ていると、落ち着いた気持ちになり、ゆったりとしてきます。世の中の慌ただしさ、喧騒から
引き離されて、静かな世界へと招いてくれます。